ショートショート 【死の靄】

小説/ショートショート

何かが跳ねるような金属音が長い廊下に響き渡る。

金属製の長い廊下は、まるで一枚の板で作られたかのようにつなぎ目がない。

そして廊下は緩やかにカーブしており、ドーナツ状になっていた。

 

ここは宇宙船。

今までに見たことのない奇妙な形をしている。私の物ではない。私たちの星のモノではない。

窓から見える無数の星は素晴らしく綺麗だったが、知っている名前の星はなかった。

 

ドーナツ状の宇宙船の中心には広い部屋がある。

そこには私と私が乗っていた宇宙船。そして4人の宇宙人がいた。

宇宙人たちは私に優しく声をかける。

「安心してください。私たちはあなたの敵ではありません。私たちは宇宙の調査中にあなたの宇宙船を見つけました。しかしあなたの乗ってきた船は欠落品でありこのままではあなたの命が危ないと判断したため我々の船にワープさせました。宇宙船を改良したらあなたと船は元にあった場所に戻します。それまでは申し訳ありませんがここで待機していただきたいです。」

私は宇宙人が日本語を話しているのに驚いた。言葉が分かるというのだけではなく、彼らには口がなかったからだ。

いや、そもそも実態もなかった。

 

彼たちの体は白いもやのように見えた。もやが集まってできた輪郭も実態も無い姿。それが彼たちだった。

「お待たせしました。あなたの宇宙船の修理が完了しました。ですがこんな原始的な宇宙船では宇宙はとても危険です。なぜこんな欠落品で飛ぼうなどと思ったのですか?」

彼たちの発言は正しかった。この船はとても原始的だし欠落品だ。しかし現在の地球人にはこのレベルが限界だったのだ。

 

理由は二つ。

戦争による資源と人の減少だ。

現在の地球ではどこでも戦争が起こっている。死に向かっていると知っておきながら、生きようとするために他の生物を殺す。

人口は数億人しかおらず、人も資源もない。

木々は無くなり生物もほとんどが絶滅した。巨大な虫がはびこる死の惑星だ。

そんな中、他の惑星に避難しようと宇宙に飛び立つものが出てきている。

この先滅びゆく地球を捨て、別の惑星で生きていくことを選んでいる。私もその一人だ。

しかし実際に、別の惑星に到達できたものがいたのかは誰も知らなった。

 

「どうしますか?船は完全に戻りました。あなたが元いた場所に送って差し上げましょうか?」

「待ってくれ。俺は元の場所には帰りたくない。頼む、あなたたちのところで住まわせてくれないか。」

「なぜですか?」

「実は、俺が住んでいた地球という惑星では戦争が起こってしまい、もう人が住むべき場所ではなくなってるんだ。だから頼む。迷惑はかけないからあなたたちの星で生きさせてほしい!」

「わかりました。しかし私たちには実態がありません。もやの中に思考だけが存在する生命体です。臓器も無ければ苦しみもない。もちろん死という概念もありません。ですがあなたは人間だ。我々と一緒に暮らすとなると少し注意をしなくてはいけないことがあるのです。」

「なんでしょうか。」

「我々は白いもやです。ですが中には黒いもやに変化するものもいます。そうなったものには注意してください。」

「なぜですか?」

「黒いもやになったものは存在が変わり、【死の概念】に変わります。【死の概念】に触れればどんなものでも死にます。生命が無いものでも【死の概念】が発生し、どんなものでも死ぬのです。【死の概念】が発生する理由は明らかになっていません。しかし安心してください。我々は全力であなたを守ります。」

 

白い光に包まれたあと、目を開けるとあの四人と共に知らない場所にいた。

「ここが私たちの惑星です。どうぞごゆっくりと。」

そこはまるでかつての地球そのものだった。

高いビルが立ち並び、公園には芝生が生えている。空は青く鳥が飛んでいる。

唯一違う点といえば人間の代わりが、あのもやの宇宙人になっているという事だった。

 

私はそこで何不自由暮らした。彼たちに家を与えられフルーツやステーキなどのおいしい食事を与えられた。

ここに住む者たちは食事をとらないのになぜこんなに美味しいものが出てくるのかわからなかったが、深く考えないようにした。

 

ある日、家の前に黒いもやがでた。【死の概念】だ。

町中に警報がなる。

『近隣住民の方はすぐに避難してください。家の中は危険です。すぐに離れてください』

窓からのぞくと【死の概念】は半径1メートルほどの黒いもやだった。ゆっくりと移動していき、触れたものを全て殺していた。

木も虫も動物も、ここに住んでいるもやで出来ている宇宙人も、道路も壁も空気も水も砂も音も光も。

命が無いものでも【死の概念】が触れることで死ぬようになってしまった。

黒いもやに触れたものは色が真っ黒になったあとチリになって消えていった。

まるでブラックホールのように全ての物を吸い込んでいった。

 

すると私を救ってくれた宇宙人がどこからともなく表れた。

「ここは危険です。すぐに避難してください。」

「あれはいったい何なんですか?」

「あれは【死の概念】です。どんなものでも触れたものは死の概念が生まれ、死んでいくようになってしまいます。」

「あの死の概念はどうすればいいんですか?」

「とにかく逃げてください。あれは通常10分程度で消えてなくなります。あれが消えるまでとにかくここから離れてください。」

私は彼の言う通りすぐにここから逃げた。

 

しかしあの黒いもやは、あれから一か月たってもなくならなかった。

 

なぜなくならないか、誰にも分らなかった。

 

【死の概念】はあらゆるものを殺していく。

この惑星はこの一か月でだいぶ変わった。

あのもやが触れた全ての物質は死に、酸素濃度が低くなっていた。

空は暗くなり時間の流れがゆっくりになり、土地が小さくなっていた。

 

もう黒いもやはどこからでも見えるぐらいの大きくなっていた。

 

そして惑星の研究者たちが一つの答えを導き出した。

このもやが消えない原因は私のせいだと言ってきたのだ。

私が来る前のもやは全て10分ほどで消えていたが、私が来てからはそうではなくなったからだと。

信ぴょう性や証拠が全くなかったし、ただの偶然なのではないかとも思われたが、すでに遅かった。

惑星中のすべての人がその答えに賛同したからだ。

証拠は何もなかったが、とにかくみんな私が死ねばこのもやが無くなると思い込んでいた。

どうしようもなかった。

私は拘束されて、あの【死の概念】に放り出されることになった。誰も反論するものはいなかった。私もそうだった。

 

最後に見た彼たちは、少し黒い輪郭のようなものが見えた気がした。

 

【死の概念】の移動先に私が固定される。じわじわと死が近づいてくる。

そしてゆっくりと体が飲み込まれる。

 

指先が黒くなっていきチリとなるのを見ていた。

痛みはなく次第に何も考えられなくなっていた。そのころには頭まで飲み込まれていた。

 

死の概念の中はとても真っ暗だった。時や空間というものは無く死しかなかった。

 

しばらくすると私は目を覚ました。

立っていた場所は、現在の地球だった。

 

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