ショートショート「深海電車」

小説/ショートショート

耳には空気が塊となって移動する音が入り込んでくる。暗く深い深海にこれほど長いトンネルはあっただろうか。

私たちはいつも集団で移動する。群れていた方が大型魚に食べられる心配が少ないからだ。しかし彼らは仲間ではない。

いつも一緒に行動はするが心が通じ合ったことは一度もない。全員が自身の安全のために利用し、利用されている関係だ。

今日こそはこのトンネルの最深部に行く。

何年間も挑んでは破れ、新しく生まれる命を待つのみだった。しかし我々は数を手に入れた。門番もかいくぐることができるだろう。

笛の音とアナウンスが鳴り響く。

『ピーーーーーーー!』

『あと一分で電車が到着いたします。』

私たちはいっせいにトンネルの奥へと泳ぎだした。
次の瞬間、この時を待っていたという顔をした大型魚が襲ってきた。なん十匹もいる。

仲間たちは次々に食べられていき、血生臭さが鼻を突いた。私はその不快感から逃げるように泳いだ。

トンネルはいくつにも枝分かれしており、先を見ることはできない。実際に私は電車を見たことすらないが、とにかく前に進むしかない。進まなければ死ぬだけだ。

徐々に視界に映る仲間たちが少なくなっていく。まだ数十秒しかたっていない。
トンネルはどんどん狭くなっていき、圧迫感が出てきた。

速く。速く。後ろは怖くて振り向けない。ついにここまで来たんだ。もっと早く。

『プシューーーー!!!』

とんでもなく大きな音が聞こえてきた。電車がもうすぐで来る。タイミングは完璧なはずだ。あと数十メートル泳ぎ切るころには、ちょうど乗れる。

『まもなく電車が到着いたします。黄色い線までお下がりください。』

来た。初めて見る電車は想像していたよりも小さかった。窓はなく、鉄の扉ががっしりと一定間隔をあけてついていた。ついに電車は私の目の前に止まった。

はやく。はやく開いてくれ。
扉は一向に開かない。私はついに後ろを見てしまった。200メートルほど先から、大型魚がものすごいスピードで泳いできている。

はやく開いてくれ。鉄でできた扉はまだ開かない。
耳を澄ますと内側からドン!ドン!という音が聞こえてくる。

『まもなく扉が開きます。』

きた。金属がこすれる音が聞こえて前を振り向くと、そこにはすでに何千匹も小魚が乗っていた。

「…!」
声が出ない。乗れない。空きは全くない。

一番前にいるやつと目が合った。
彼は怯えて電車の内側に入り込もうと必死だった。
私はそいつを殴り、外に無理やり引き出した。
一人分開きができた電車内に力ずくで体をねじ入れた。
『まもなく扉が閉まります。』

金属音を鳴らしながら扉が閉まっていく。私は乗客と鉄の扉の間でつぶされていた。
やった。ようやく乗れた。これでやっと終わる。ようやく人間に戻れる。
突然、扉から大きな音と衝撃を感じた。

しばらくして、血生臭さが鼻を突いた。

 

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『深海電車』

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